『ひとり−Stories−』


 鍵を手にしドアを開けた。
 『おかえり』って声がしないってことは、きっとお前は二階で眠っているのだろう。
 そう思いながら鍵を棚の上に放り投げる。

 これといって派手なものは何にもないシンプルな部屋。
 「壁が白いから」と大抵のものは白にした。
 ここで俺たちは暮らしている。

 ふと机の上にあったエアメールが目に付き、手を伸ばす。
 「…懐かしいな」
 そんな風に思いながら一番上にあるはがきに目を通す。
 
 部屋の中で一番こだわったソファーに腰をかけ、ふと色んなことを思い出していた。
 昔は、なんてことなく言っていた「愛してる」って言葉を
 最近は言わなくなっている自分に気付く。

 「何時からだ?」と考えてみた。
 それはきっと「お前のことを本当に愛し始めている」そう気付いたあの日からだろう…


 あの日、お前の瞳の奥に小さな未来のひかりが見えた気がした。
 でも、何故かそれが俺にはとても切なく思えてしまった。
 それが余計に愛しく思えて、俺はどんどんお前に吸い込まれていくような気がした。

 ソファーの前に置いてあったスケッチブックが開いたままになっている。
 それを見て「今でも時々描いているんだな」そうつぶやく自分。
 そんなことを繰り返しているうちに、段々不思議な気持ちになっていく。
 元々はデザイナーという別の夢を追いかけて、海外にまで行っていたお前が
 今はこうして俺の側にいるという、その真実が何だか夢であるかのように思えてしまう。


 でもここまで来るのにも色々とあったことは否定しない。
 あれは三月のある日、お前のことを疑わずにはいられない出来事があった。
 何故かその時、俺の目からガラにもなく涙が急にこぼれ落ちていた。

 しばらくは、二人の関係も何だかギクシャクしていたけれど
 五月になって自然と許し始めている俺がいた。
 そのまま色んなわだかまりも夏と共に溶けていってしまったようだ。

 壁に飾ってある二人の写真。
楽しそうに微笑んでいるお前の顔を見て
 「そんなこともあったっけな」なんて懐かしく思いながら
 俺はお前のいる二階に向かおうと立ち上がった。


 階段を上がりながら、色んなことを思い出していた。
 そしてお前のことを本気で愛している自分に改めて気付いた。

 部屋に着きドアを開けると、そこには幸せそうにベッドで眠るお前の姿。

 ベッドの横側に座ってお前の顔を見つめる。
 そんな俺に気付いたのか、ゆっくりと瞳を開けるお前。
 「前に恋をしていた頃のお前とは、今はもう別のお前なんだよな…」と
 胸の中で静かながらも激しくお前のことを愛している俺がここにいる。


 お前には言わずにいるけれど、たった一つのことを俺は自分自身と約束した。
 「これから二度とお前のことを離さない」と。
 今までもこれからもたった一人しかいないお前と歩いてゆこう
 二度と悲しい歌がお前の耳には聴こえないように… 

 「愛してる」

 思わずこぼしてしまった言葉を聞いたお前は嬉しそうに微笑むと
 やわらかく包み込むように俺を抱きしめた。

 そんなお前を見て
 「俺の側から離れるな」
 そう思いながら、お前のことを抱きしめる俺がいた。



2003/2/22(SAT)


   

この作品は「ひとり」の歌詞とPVを混合させて書いた作品です。なので妙に変なこじ付けになっている感じのところがあります(汗)
この曲は、歌詞もPVも何となく雰囲気が似ているような気がしたために書いてみようと思った作品ですが、どうでしょうか(汗)
「ふざけるな」と思う人もいるかも知れませんが、あくまでもこれは浅羽のイメージですので…

はっきり言って相変わらず作品に対する自信はありません。
でも、この文を読んで「ひとり」の歌詞とPVが頭の中で流れてくれたら、幸いです。


2003/2/22(SAT)

(C)Tsukasa Asaba
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