『You Know?-Stories-』
日々色んなことに気付いて、気付かされて僕らは生きている。
身近に何かが起きなければ、命の重ささえ解らないままだ。
そういったことに君は気付いているのかな。
『また彼とケンカしたの…』
喫茶店で泣きながら彼女は言った。
「どうせ、また我儘言ったんじゃないの?」
またかと思いながら、ちょっとフザケ気味に言う。
『最近、忙しいって全然会ってくれないし、メールもくれないから、 昨日電話で聞いたの
<最近メールもくれないじゃない。仕事と私、どっちが大事なの?>って。
そうしたら彼が怒って”そんなの選べるわけがないだろう。いい加減にしろ”って…
そして”こっちだって忙しいんだ。何度も電話よこすな”だって…
声が聞きたかったから電話しただけなのに…』
…やっぱりな。お決まりのパターンだ。
「で、一日に何回掛けたわけ?」
『そんなに何度も掛けてないわよ。5回ぐらいしか』
当たり前のようにサラリと言う。
「忙しい時に5回はキツイね」
思わず本音。
『何?私が悪いって言うの?』
って、悪いと思ってないところがスゴイと思うよ、僕は。
「人それぞれだからね…」
誤魔化すかのようにコーヒーを飲んだ。
何時も当たり前のように、彼氏とケンカしたなど何かがあると僕のことを呼び出して
こっちの都合とか、人の迷惑とか何も考えずに言いたい放題喋るだけ喋って
スッキリさせる彼女。
「友達だから…」と思う反面、何度もこうだといい加減ウンザリもしてくる。
でも、話を聞くだけで満足するならと思い、いつも「やれやれ」と思いながらも
取り敢えず話が終わるまで付き合っている。
大抵のケンカの原因は彼女の我儘だったりする。
『毎日電話して』
『毎日会いたい』
『私以外の女と会わないで』
そういったことを彼氏に言ってはケンカになる。
いつもこうして話を聞いていると、次第に彼氏に同情をしたくなってくる。
よくこれで別れないなと正直思う。
僕だったら、きっとすぐに別れてしまうんだろうな…なんて。
友達としてなら良いヤツなんだけど…ね。
『何だか話したらスッキリした〜』
僕に話すだけ話したら、どうやらもうスッキリしたらしい。
『言いたいこと言ったら、満足したみたい』
「それなら良かったんじゃないの?」
まぁ、何だかんだと言いながら、彼のことが好きだということを僕も知っているから
こうして毎回話を聞いてるんだけどね。
『聞いてくれてありがとね。じゃあ』
そう言うとお金を払ってお店を出て行ってしまった。
「ふぅ…」
一人になった僕は、コーヒーを飲むとため息をついた。
よくもまぁ、毎回色々と話すことがあるなぁと感心してしまいそうになる。
でも、彼女の話を聞いた後は何時もふと思ってしまうことがあった。
<これで彼と別れることになったら、どうなってしまうのかな…>と。
別に別れて欲しいわけじゃないし、このまま仲良くいて欲しいと思ってる。
だけど、もしそうなったら今までのように僕に話すだけ話してスッキリするというわけには
多分いかないだろう。
まさかとは思うけど『自殺する』とか言ったりするのかな…
いくら何でもそれだけはないと信じたい。
自ら命を落とすことだけはして欲しくないし、考えて欲しくない。
死から始まるものなんて、きっと何もないのだから。
…しかし、そんな僕の想いも空しく現実のこととなろうとしていた。
あれから数週間、彼女からの電話がないなと思っていた僕の耳に
彼女が彼氏と別れたということを友人から聞かされた。
「えっ!?嘘だろ?」
正直、信じられなかった。
『どうやら何度も連絡しようとして「何度もしつこい。お前の我儘にはもうウンザリだ」
って言われてそれっきり終わったらしいぜ』
「…そう」
自分のことでなかったのに、何故かしばらく呆然としてしまった。
何時もなら電話してくるはずの彼女が電話もしないだなんて
余程ショックだったのかな…なんて考えてしまった。
「そういや、彼女はどうしたの」
思わず気になって聞いてみた。
『いや、俺は別れたことしか聞いてないから、そこまでは判んない』
「そっか、それならいいんだ。ありがとな」
それだけ言うと手を振りながら背を向けた。
僕はちょっと気になって、彼女の家に行くことにした。
−ピンポーン−
返事がない。
段々イヤな胸騒ぎがして、ドアノブを回すと鍵が掛かっていなかった。
急いで部屋に上がりこむと、彼女はベランダにいた。ホッとしたのもつかの間
次の瞬間、彼女は柵を越えようとしていた。
<何をする気だ!!>
すぐさま彼女を後ろから引っ張り降ろすと、彼女は激しく泣いた。
『このまま死なせてくれれば良かったのに…』
その言葉を聞いた僕は、彼女の襟元をつかむと顔をはたいた。
「彼に振られたからって自殺するだなんていい加減にしろ!軽々しく死のうとなんてするな!
……僕には、幼稚園からずっと一緒だった親友がいた。
あいつはずっと『将来の夢はサッカー選手になること』っていつも言ってた。
僕もその夢を応援していたし、あいつならきっとなれると信じていた。
だけど…高校の時、道路で子供を助けようとしたあいつは事故にあって…
もう二度と夢を追いかけることは出来なくなった。
そんな出来事があってから、夢があっても叶えることが出来ない人がいるのに
やろうとすれば何でも出来るはずなのに、何もやろうともしないで
乗り越えることもしようとせずにいる。そういうヤツを見ると我慢が出来なくなる。
死を選んで何が始まるの?それで自分は満足なの?
後に残された人の…気持ちを考えたことはあるのか!」
そう言うと彼女の襟元を離し
「…もういい」
そう言って僕は彼女の部屋を出ていった。
あの後、僕は帰る時の記憶がなかった。色んな感情が頭の中をグルグルとし続けていた。
…ただ覚えていたことは、気が付けば僕の頬に涙が伝い落ちていたことだけだった。
その後、彼女と会わないまま時が流れた。
友人からの話によると、しばらく実家に帰ると言ってたらしい。
家に帰ると僕宛に手紙が届いていた。
名前を見るとそれは彼女からだった。僕は手紙を広げ、読み始めた。
元気にやっていますか? あれから私は気持ちも落ち着き、どうにか頑張っています。 あの時はごめんなさい。 今思えば、どうしてあんなことをしようとしてしまったのかと考えてしまう時もあります。 だけど一つだけ解ってほしいことは、あの時の私は本当に彼のことが好きだったから 失った悲しみは自殺しようとしたほどとても強いものだったと言うことです。 我儘だと思われても、いい加減にしてくれと言われても彼以外には考えられない。 そういう気持ちでした。 でも今では頑張っていこうと思える自分がいます。 今度あなたに電話する時が来たら…その時は良い報告をする時になればいいなと思っています。 今までありがとう。 |
今でもあの日の彼女が間違えているだとか、そういうことを考えたことはないし
僕のしたことが正しいのかどうかさえ誰にも解らない。
ただ、ちょっとだけでも考えて欲しかった。
−この世には本当に必要のない人間などいない−
と言うことを。
君が誰かを必要としている限り、誰かも君を必要としている。
ここまで生きてゆく中で、色んな出会いと別れを繰り返しながら毎日を生きて
決して悲しいことばかりじゃなかっただろう?そのことを思い出して欲しかった。
これから起こるであろう沢山の想い出を自らの手で失くして欲しくなかったし
今のこのツライ現実から逃げないで欲しかった。
それは僕のただのエゴでしかなかったのかも知れない。
…だけど僕はそれで良かったんだと思ってる。
手紙を読み終えた僕は
「久しぶりに、あいつのところにでも行こうかな」
そんなことを思いながら晴れ渡る空の下、思い切り伸びをした。
2003/8/5(TUE)〜2003/9/11(THU)
今回は安岡さんをイメージして書いた詩「You Know?」がモチーフです。
正直この詩を書いている時には、まさかこの詩から後に文章を書くことになるとは予想だにしないことでして…内容に困りました(汗)
しかし「Slow Love」や「Don't You Know」を書いていき、次はこの詩からだと考えた始めた時から詩の内容のように相手に考えさせる内容の
文章にしたくて考えた末、今回はこういった形にさせていただきました。
精神的に不安定になると「生きている価値のない人間ではないか」「自分が死んでも悲しむ人はいないだろう」等々考えてしまったりします。
しかし自殺する勇気などは持っていませんでした。だからと言って自殺をした人が勇気があると思っているわけではありませんが(汗)
今はこうしてサイトを開き「やるからには最後までやり抜く」という目標もあり、不安定になっていませんので「死」を考えることはありませんが…
そんな浅羽ですので人に説教出来るほど偉い人ではありませんし、自殺をした方を否定するつもりも、非難するつもりもありません。
しかし、ちょっとでも何かを感じてもらえる作品になればいいなと思っています。
これを読んで気分を害された方がいましたら、本当にすいません。
2003/9/11(THU)
(C)Tsukasa Asaba
clip art by Little Eden