『あ・い・う・え・お』
葵(あおい):長男 庵(いおり):次男 潮(うしお):三男
縁(えにし):四男 朸(おうご):五男
------------------------------------------------------------
ここに裕福ではなくても仲の良い五人の兄弟がいた。
とある街の中、荷車を引く朸。
その荷台には大きなスイカが5つ乗っている。
「うーん… うーん…
なぁ庵、何で僕だけが荷台を引っ張って、お前は荷台に乗っているんだよー」
ブツブツと文句を言いながら、朸が荷台を引っ張りながら歩いている。
その荷台には、スイカと一緒に庵が我が物顔で乗っかっていた。
「だって、俺、ひ弱だもん♪」
明らかに嘘だと解る口調で庵が朸に言う。
「嘘付け!僕より体がでっかくて体力もあるくせに!
面倒なことは何時も僕にやらせて!!」
何だかんだと言いながらも荷台を引っ張っていた朸だが、
庵のその言葉に、思わず荷台を引くのを止めると
「もう、ここから庵が引けよ。 もう、僕疲れた!」
ちょっと大袈裟気味に言いながら、朸はその場にしゃがみ込んだ。
「何だよ。どうせ、あとちょっとで着くじゃんか」
「うるさーい!引かないったら引かないの!もう一歩も動けない!」
しゃがんだまま首をブンブン振って、動こうともしない朸。
それでも、そのまま庵は荷台に乗ったまま動こうともしなかった。
−−−−−
二人が向かおうとしている方向から、一人の男が歩いてきた。
そして前方にいる荷台に気付くと
「おー、朸、庵、お帰り〜。
そろそろ来る頃じゃないかと思って、来てみたんだ。
どうせ お前ら二人じゃ、また庵がズルしてるんじゃないかと思ったしね」
ニコニコとした顔で葵が話す。
「もー、その通りだよ、葵ー。
庵ったら、ひ弱だとか言って全然引っ張らないんだもん」
拗ねたような顔をして、朸が言った。
やっぱりなぁと言う顔をした葵が庵に
「そんなズルをするようなやつにはスイカはやらないぞ〜」
と、ワザとらしく庵に向かって言うと
「分かったよ、引きゃ良いんだろ!」
庵もスイカが食べたかったらしく、慌てて荷台から降りてきた。
「さすが葵!庵のこと、よく分かってる♪」
朸が満足そうに笑うと、葵の側に駆け寄った。
「何だ、一歩も歩けないなんてやっぱり嘘じゃん」
「庵になんて言われたくないよ!」
ジロリと朸がにらみ返した。
それを見た庵が
「おー、怖い怖い」
と、わざとらしく言いながら首をすくめた。
「じゃ、そろそろ行こうか。
家で潮も縁も首を長くして待ってるぞ」
「まぁ、縁はどうかは分からないけどな」
ニヤっとした顔をした庵が、仕方なくといった感じに荷台を引っ張り始めた。
−−−−−
ガラガラガラーッ
『ただいまー』
三人が元気よくドアを開けた。
「おぉ、お帰りー。
やっぱり庵、引っ張ってなかった?」
障子から ひょっこりと顔を出した潮が、当然かのように言った。
「うん。でも、そんなんじゃスイカあげないって言ったら、そこから引っ張ったよ。
やっぱり庵もスイカが食べたいみたいよ」
と葵が笑いながら話す。
まるで予想出来ていたかのような会話をする、葵と潮。
「あー疲れた〜」
居間に上がると庵がゴロリと寝転がった。
「あれ?縁は?」
キョロキョロと周りを見渡して、朸が言う。
「あぁ、何か思い付いたことがあったみたいで、奥に入ったきり、そのまま部屋にこもってるよ」
子猫と夢中でじゃれ合っている潮。
それでも朸の声が聴こえていたらしく、顔は猫に向けられた状態のまま、朸に言った。
「また何か発明でも出来たのかな〜?」
「かもなー」
段々朸の目がキラキラと輝き出すと、そのまま縁のいる奥の部屋へと走って行った。
−−−−−
『発明中』と貼られた障子を遠慮もなく朸はガラッと開けると同時に
「縁、今度は何を作ってるのー?」
「………」
椅子に座って何かをしている縁は、気付かずにいるらしく何も反応がない。
縁は一度集中し出すと、他のことが見えなくなってしまう性格らしい。
それを知っている朸は、怒った様子も見せずに縁の肩をポンと叩く。
「え・に・し!」
「ん〜?」
肩を叩かれた縁が、自分のしていることを続けながら生返事をする。
「今度は何を作ってるの?」
「…ん〜…」
尚も生返事をする。
次第に痺れを切らした朸は、縁の顔の前に自分の顔を突き出す。
「もう、縁ってばー」
突然目の前に出てきた朸の顔に縁はピクっと反応をすると、
それまでやっていた作業を中断し、椅子をクルっと向き直すと
「ごめん ごめん。ちょっと、ここの部分が細かくてね。ついつい。
で…、何だっけ?」
「だから、今度は何を作ってるの?って」
「あぁ、これ?出来てからのお楽しみってことで。
でも、もうちょっとで完成しそうな感じ」
「へぇ〜。何だか分からないけど、面白そう♪」
興味津々な顔をして見ている朸。
しばらくすると居間の方から
「おーい!縁、朸ー!そろそろご飯にしないか〜」
と、葵の声がする。
「はーい。今行くよ〜!!」
そう返事をすると
「ほら、縁 ご飯だってよ」
「ん〜…もうちょっとなんだけどなぁ…」
そう言う縁を、半無理矢理引っ張っていくかのようにしながら
朸は居間へと向かって行った。
「おぉ〜、今日も美味しそう♪さすが葵!」
「今日も腕によりをかけたよ〜」
嬉しそうに へへっと笑う葵。
「ご飯が終わったら、朸が持ってきたスイカ食べような」
「うん!」
「朸だけじゃなく、俺だって持ってきただろ!」
「はいはい」
葵が流すように庵に言うと
『いただきまーす!』
元気な五人の声が響き渡った。
2005/6/14(TUE):名前等設定
2005/9/3(SAT)〜2006/2/24(FRI)
この作品は、一応サイトの10000HIT記念とさせていただきました。
というのも、簡単な性格だけゴスの5人を想定させていただいたというのが最大の理由です。
でも、パラレルとかいうのとはまた違うかも?良く分かりませんが(汗)
元々「葵・庵・潮」という名前が最初の一文字が「あ・い・う」になるので、
3つ子とか、3人兄弟とかに付けたら…という想像を昔からしてまして。
そして、ふとアカペラシリーズみたいな、脚本みたいな感じのものを書いてみたらどうかなぁ…と
思ったことをきっかけに、それなら この名前を使ってみてはと思ったわけです。
その後、「え・お」の二つの名前を考えて、こういった形となりました。
ちょっとサ○エさんのような暖かいほのぼのとしたものをイメージしてます。
あと、年齢は高校生くらいな感じかな?
未だこの先も続くかどうかなどのことまでは考えていなかったり(汗)
兎にも角にも、サイト10000HIT ありがとうございます。
2006/2/24(FRI)
(C)Tsukasa Asaba
photo by @FRONTIER