『あ・い・う・え・お 2』


葵(あおい) 庵(いおり) 潮(うしお) 縁(えにし) 朸(おうご)


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あくる日の朝の出来事。



「ふぁ〜」

と、あくびを一つして起きてきた葵。
さっさと顔を洗うと、エプロンを着けて朝食の準備を始めた。

「さーてと。今日も始めますか!」

腕をまくると、そう言って台所に立つ。
料理は昔から得意で、一家のご飯は彼が全部作っている。
無論、全員のお弁当も。

「♪ん〜♪♪んん〜〜」

この日も朝から鼻歌を歌いながら、上機嫌で玉子焼きを焼いていた。
そんな葵の上機嫌も、ある時を超えると今度はどんどんと不機嫌へと変わってゆく。
いや、変えられてしまうのだった。


「ふぁ〜あ!おはよ〜」

眠たそうに目をこすりながら、朸が起きてきた。

「おはよ〜。朸は何時も早起きだね」

味噌汁の味見をしながら、返事をした。

「やっぱり遅刻はしたくないからね。
 無遅刻無欠勤。5分前行動が僕の基本だから」

「もうすぐ朝食と弁当出来るから」

「はーい。僕もドンドン顔を洗ってこようっと♪」

そう言って洗面所へと向かっていった。
朸は毎日ほぼ決まった時間に起きて、どんどん自分で準備をしてゆく。
なので、葵も朸に関してはこれといった心配もなくいられるのだ。

朝食と弁当の準備を終えた葵は

「さて、問題はあいつらだよなぁ…毎日毎日まったく…はぁ…」

毎日のことだとはいえ、正直気が滅入る。
そんな感じで肩の落とすかのような素振りをしながら、葵は部屋へと向かう。



「おーい!朝だぞ!潮、起きろよー!!」

「うーん…ムニャムニャ…」

「おい!もう7時過ぎてるぞ。そろそろ起きないと遅刻するぞ!」

どんなに揺さぶろうが潮は一向に起きる気配がない。

「まったく!何時もこうなんだから…」

チェッという顔をして頭に手をやる。
しかし、葵には潮に対しての奥の手があるのだった。

「おーい、潮ー!子猫にエサをあげなくても良いのかな〜
 あっちでお腹が空いたって鳴いてたぞ〜」

そう葵が言ったと同時に、潮の目がパチッと開き

「ぬぁあっ!!そうだった!!こうしてはおられん!!!
 あぁ、もうこんな時間じゃないかっ!!」

それまでどんなに揺さぶっても起きなかった潮だが、
『子猫』というキーワードが耳に入った瞬間、ガバッと起き出したかと思えば、
慌てて子猫の元へと走っていった。
猫が好きな彼にしか出来ないだろう奥の手である。

「どんどんエサをあげたら、準備してご飯食べろよー!」

走り去る潮の耳には多分聞こえてはいないだろうとは思いつつ、一応言っておくと

「よしよし。これで一人目完了♪」

小さくガッツポーズをすると、葵は次の部屋へと向かう。



「おーい!朝だぞ!庵、起きろよー!!」

「うーん…ムニャムニャ…何すんだよ…やめろって…」

寝返りをうちながらも、尚も寝ている庵。
どうやら夢を見ているようだった。

「何もしてないっつーか、何もするわけないっつーの!
 いいから早く起きろよ!!」

布団を引っぺがしても、揺さぶっても、未だ庵はしぶとく寝ている。

「ううん…くすぐったいって言ってんだろ…」

「どんな夢見てんだよ!?」

布団の上で大の字になり、下着はお腹が出た状態で時折ポリポリかじり、
口をガボッと開けてガーガーといびきをしている。
本人はとても気持ち良さそうに寝ているだけに、余計葵の腹が立つ。

「あぁ、もう! もう知らない。勝手に遅刻でも何でもしろ!」

あまりにもカチンときた葵は、庵をほったらかしにすることにし、
次の部屋へと向かっていった。



「おーい!朝だぞ!縁、起きろよー!!」

「……」

庵の次に来るせいか、静かな寝息だけで寝ている縁の部屋に来ると、
何時もあまりの静けさに一瞬驚かされる。

一度何かをし始めると夢中になってしまい、周りが見えなくなってしまう縁。
それだけに、きっと前の日も自分で終わりだと思うまで何かをしていたに違いない。

「おい!縁!もう7時半近いぞ!」

やっぱり揺さぶっても起きない。
昨日、知り合いの人にお願いをして、いただいたものがある。
それが効果があるのか分からないが、葵は試してみることに。
MDを出すと、コンポのスイッチを入れ、MDを流す。

 ♪ジャジャーン ♪ジャジャジャジャーン ♪♪〜

「……」

「…効果なかったかな…」

 ♪ジャカジャカジャカジャ ♪ジャカジャカジャ ♪  ドン

「あれ…今、思い切り音外れなかった? やっぱり小学生だとこんなもんなのかな?」

小学校の元担任にお願いして、小学校の鼓笛隊の演奏を録音してもらったMDをもらったのだった。
MDの内容は初めて聴くのだが、時折外れた音がするのは練習の最中で録られたからなのかも知れない。

そんなことを思っていると、縁が突然ボーっとした顔でムクッと置き出したかと思ったら、
コンポの方を向いて一言。

「……トランペットがワンテンポ速い…あと…大太鼓がワンテンポ遅い…」

やった!!と心の中で思いつつ、慌てて

「縁!縁! もう7時半だぞ!起きろ」

「…あぁ…もうそんな時間?…うん…解った…」

尚もボーっとした顔をしつつも、ベッドから起きだし、モソモソと準備を始めた。

「やった、成功♪ でも、何度もってわけにはいかないだろうな…」

そうは思いつつも、成功したことに対して顔がニヤける。

朝食にしようと居間に向かう途中で、再度庵の部屋を覗いてみるも、相変わらず庵は眠ったままだった。



居間の障子を開けると、準備を終えた朸と潮が朝食を食べようとしているしているところだった。

「どう?庵も縁も起きた? あ、今ご飯よそるね」

「お、サンキュー。 縁は今準備しているとこ。今日は作戦勝ちって感じかな。
 庵は寝ぼけていたのが頭に来たから、そのままにしてきた」

「わはは、そりゃ遅刻確実だろうな」

「今日は起きたけど、潮も人のことは言えないだろ!」

「…はい、すいません」

「じゃ、食べようか。いただきます」

『いただきまーす!』

しばらくすると、準備を終えた縁も加わり、4人でワイワイと朝食をとる。
ホカホカのご飯に玉子焼き。味噌汁と焼き魚。
美味しそうに頬張る3人を見ていて、ちょっと嬉しく思う葵だった。


食事も終わり、そろそろ出掛ける時間になって

『あ゛ぁー!!』

奥の方から雄たけびが聞こえてきた。
勢いよく走ってくる音が聞こえたかと思ったら、障子が開き

「もうこんな時間じゃねーか!何で起こしてくれねーんだよ!!」

やっと目を覚ました庵がシャツのボタンも留めずに頭もボサボサの状態で、息を切らせて叫んでいる。

「何度も起こしたのに、寝ぼけて起きなかったのは庵だぞ」

「んなこと言ったって…あぁーもう時間ない!!飯くれ!」

「自業自得だろ。まったく」

ご飯をよそい、テーブルに置くと、

「じゃ、僕等はもう出るから。あとよろしくな〜」

「そんな…。もうちょっとだから待ってくれよ〜」

情けないような声を出し、庵が慌ててご飯を食べる

「皆、弁当忘れずに持ったか?じゃあ行って来ます」

『行って来まーす!!』

「庵、戸締り忘れんなよ!」

「待ってくれ〜!!!」

そんなこんなで1日が始まるのだった。





2006/8/31(THU)〜2006/9/3(SUN)



「あ・い・う・え・お」第2弾です。
今回は、自分が2006年9月25日でゴスファンになって丸10年経ったという記念に書いてみました。

時にはそういうきっかけに作品を書いてみるのも良いではないかと。
普段なかなか書けない人でもありますので…

作品に関しては。
ちょっとギャグテイストになってしまった感もありますが、何となく頭に思いついた朝のドタバタ劇。
シリアス物より、実は楽しげな方が好きな自分にとっては、なかなかベタではありますが、
何となく想像がつきそうなのが、また良いのではないかと(笑)

実際の合宿中ではどんな感じなのでしょうかね?
一度見てみたい気もします。
まぁ、きっとこんなドタバタする必要はないのでしょうが(笑)



2006/9/24(SUN)



(C)Tsukasa Asaba
photo by @FRONTIER