あ な た に 微 笑 む 


あっという間に通り過ぎてしまった車の外の華やいだ世界を
バックミラーの中に見つめる。
心に焼き付けておくだけでは、悲しすぎる。
本当は、ずっとずっと見ていたい。
触れることは叶わなくても、ずっと見ていたい。

あなたも、私の人生の中をあっという間に駆け抜けてしまうの …?
想い出を心の中にしまいこんでいるだけでは、寂しすぎる。
本当は、ずっとずっと一緒にいたい。
叶うことのない願いだとわかっていても、ずっと傍にいたいと思ってしまう。

「随分、静かだな …」
視線を前方に向けたままでてっちゃんが言う。
「そう?」
「あぁ …」
「いつも、『お前、喋りすぎ』って言われるから、
 ちょっと静かにしてようかと思って …」
私の頭の中身を見せることなんてできないから、そう言っておく。
「なんか、調子狂う。」
ブレーキを踏みながらてっちゃんが言う。
車が完全に停車すると、しばらくぶりに私の顔を見てくれる。苦笑いをしながら …。

「なぁ〜んで、泣きそうな顔してんだよ。」
「別に、運転中に私のほうを見てくれなかったのが寂しかったんじゃないからね!」
「わかってるよ、お前、そんなこというヤツじゃないもんな。
 … でも … だから、心配なんだよ。何、考えてた?」

私が返事をする前に、前方の信号が変わって、車は再び動き出す。

「教えてあげな〜い。」
「そういうだろうと思ったよ。」
「じゃあ、訊かなきゃいいのに。」
いつもの私たちのテンポ。
売り言葉に買い言葉みたいな感じだけど、それでもこれが心地良くて、
こんな関係が、かけがえがなく、いとおしく思えて、私の頬は緩んでしまう。

今年も、こうして2人で春の訪れを感じている。
過ぎ行く春を感じている。

過去だけじゃ寂しいね。
だけど、明日のことなんてわからない。
だから、この咲き誇っている花のように、私は精一杯の自分であなたと時を刻みたい。

幸せないまの積み重ねが、私を強くしてくれるから。
幸せないまの連続が、あなたとの明日を約束してくれるから。
いま、この瞬間を楽しまなければ、きっと幸せはするりと逃げてしまうから。

「ね、てっちゃん♪」
これ以上ないっていうくらいの笑顔を向けたら、
「わけわかんね〜」
って言いながら、私に微笑み返してくれる。運転中だから一瞬だけど …

春風が心に薫る。

―――あなたに微笑む―――


66766番、浅羽司さまのリクエストは、
「村上さんをお相手に『桜』というキーワードで」とのことでした。
「あなたに微笑む」は桜の花言葉です。
ご期待にそえましたでしょうか … ?

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「恋詩館」にて「66766」番を踏んでいただいた作品です。
「村上さん」と「桜」ということでお願いしました。
本当は「66666」番がキリ番だったのですが報告がなかったため、サービスしてくれまして…言ってみるものだ…(笑)

この作品の即興詩。


  『あなたに微笑む』


  「心の中を 見せたくなんてないから
   何だか何時もとは 違う態度をしてしまったけれど
   ずっと側にいたい… 叶わないと分かっていても
   思わず願わずには いられなかった


   だけど他愛ない会話が 心地良くて
   何よりも代えがたくて いとおしくて
   だからこの花のように 咲き誇れる時を刻んでいこう
   明日のことなんて 誰にも分からないから


   あなたに微笑む あなたが微笑む」


これも掲示板に書き込みさせていただきました。
何時もながら迷惑なヤツです(汗)

満開の桜の中を車でドライブ。その中でのワンシーンといった感じでしょうか。
村上さんの時折見せるフッと微笑む姿をイメージしてしまいました。その顔が浅羽は好きなんですよ。はい。
好きな桜の花言葉も知ることが出来ましたし(笑)


秋月恋詩さん、どうもありがとうございます。


2003/5/18(SUN)

いただきもの 「あなたに微笑む」