ずっとずっと友達だと思ってた。

空には雲と、淡く光る三日月。





*三日月に架かるヤコブのはしご*





終電前、人がほとんどいない駅のホーム。

見慣れない、でも見覚えのある姿が見えた。



………とくん、とくん………



「珍しいわね、電車なんて。」

一言発して隣に座った。

驚いたのか、少し体をビクっとさせてこっちを見る彼。

「――つかさかよ。驚かせんなって。

 お前こそ、こんな時間に…どした?」

「飲み会。」

「大変だな、会社員ってやつも。」

とか、言ってるけれど、彼の顔の疲労の色は隠せない。

「大変だな、歌手ってやつも。」

そう言い返してやった。

「まあな…。」

苦笑いする、彼。



ホームに電車が入ってきた。

私は次の電車なので、彼を見送る。

電車に乗り込みながら、彼が言った。

「頑張れよ。」

「……お前もな。」

"お前もな"が相当意外だったらしく、目を丸くして

ドアが閉まる寸前に、私の頭をくしゃっと撫でて

とびきりの笑顔を残していった。



そしてすぐにメールがきた。

【やっぱ、つかさおもしろいわ(笑)】



………とくん、とくん、とくん………



苦笑いじゃない、彼の笑顔。

それを見たときから、鼓動が早くなっている。

家までの道、ふと空を見上げると

三日月は、さっきまで雲がかかっていたのに

今はキレイに見えていた。















しばらくして、彼から連絡が入った。

私が、前に見たいと言っていた映画のチケットが、手に入ったから

都合が良かったら、週末見に行かないか、と。



てっちゃんと出かけられる!

嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。



―当日。

嬉しさ余って、かなり早く着いてしまった。

彼は仕事があるらしく、最終を見ることに。



けれど、いくら待っても彼は来なくて……。



結局、来たのは映画が始まって1時間後。



「つかさ、お前待ってたのか…?」

「……うん。」

「見てて良かったのに。」

ちょっと呆れ顔の彼。



やっぱり、私の一方通行なのかな。

なんだか泣けてきた。

でも、泣くわけにはいかなくて。

唇をぎゅっとかんだ。

「……一緒に、見たかったから。」

自分の意思とは無関係に、言葉が出た。

出てしまった。

「てっちゃんと、2人で会えるの楽しみにしてたから…。

 でも…、そう思ってたのは私だけだったみたいだね。」



"友達"だから私の見たい映画のチケットくれたんだよね。

今日、誘ってくれたんだよね。



「変なこと言ってごめんね。

 ―今日は、もう帰る。」

私は彼に背を向けて、走りだした。



空には、雲がかかっていて、月なんて見えなかった。















公園を抜ける少し前、強い力に引きとめられた。



肩で息をして。

私を見つめる、強い眼差し。



「あし……。」

「へ?」

「足、速いな。お前。」

「元陸上部だもん。」



「て……。手、離してよ。痛い。」

「あっ、わりぃ。」



2人の間に流れる沈黙が、永遠に思えた。



「今日は本当に悪かった。ごめん。

 言い訳はしないから…。許してほしい。」

言わなくてもわかってるよ。仕事だってことくらい。

責任感の強いあなたのことだもの。

最後まで抜けられなかったんでしょう?



「――あのさ、つかさが言ってたこと真に受けてもいいのか?」

「何がよ。」

「俺と一緒に見たかったって…。」

「あんなところで、嘘ついてどーすんのよ。」

「俺、自惚れててもいいか?」



「…はっきり言うよ。

 俺もつかさと見たかったんだよ。

 つかさに会いたかった。」

「………。」

「つかさのこと、好きだから。」

思いがけない言葉に、私は彼の顔を見つめた。

いつもみたいに、ふざけてない。

真剣な瞳。

「つかさがさっき言ったこと…。

 つかさもそう思ってくれてるって思ってもいいか?」



ありえない。そんなこと。

てっちゃんが私のことを好きでいてくれてるなんて。

友達としか、見てくれてないと思ってた。



でも、てっちゃんの気持ちは空気を通して

私に伝わってきて…。

そして、私も同じ気持ち。



「俺、自惚れててもいいか?」

「―勝手にしなさいよ。

 後でどうなっても知らないんだからね。」



今はこんな言い方しか出来ないけれど、

今度会うときは、ちゃんと言うから。

あなたの隣にいさせてね。

私も、あなたのことが好きだから。



空には少しだけ雲があるけれど、大きな満月。

私があなたに、気持ちを告げられたら

あの空は、晴れるだろうか。










タイトルは怪しいですが、中身は怪しくないんで受け取ってください。
なんか、あんまりリクエストに沿えてない気もするんですが、そこは目をつむってくださいね…。
月の使い方、自分でも結構気に入っています。

よく考えたら、あんまり名前でていませんね(汗)

「ENGELS ZIMMER」にて「15000」を踏ませていただき、
これまたキリ番制度はないのにもかかわらず知らずに報告したら、小説のリクエスト権をいただきました。
「村上さんと月」と言うリクエストをさせていただきました。
「言ってみるものだ 第4段」ですが、ここまで来ると図々しいかな(汗)


「苦笑いではない貴方の笑顔を 見た時から
 どんどん鼓動は 早くなってゆく
 でもそれは 私の一方通行でしかないのかな
 貴方には「友達」でしか ないのかな
 そう思えた時 何だか泣けてきた

 自分の意思とは違う 口から出た本音
 それは貴方も 一緒だった…の?
 今はこんな言い方しか 出来ない私だけど
 今度会う時には ちゃんと想いを告げるから

 空には少し雲がかかった 満月で
 でも 貴方に想いを告げられた時には
 あの空は 晴れてくれるのかな」


泣けてきたけど、泣くわけにはいかないと思ってしまう部分等、
所々に垣間見れる自分との接点に感情移入させていただきました。
ちなみに浅羽は元陸上部ではありません(笑)足は速くはないですねぇ…

本当は段階段階でページが違ったのですが、こういう形にさせていただきました。
いかがでしょうか(汗)


朋子さん、ありがとうございます。


2003/10/12(SUN)

(C)Tomoko
clip art by 絵夢